老親の生活に不安を感じたら
高齢の親の家を訪れるたびに通販で購入した商品が増えているのに、開封されないまま積み重なっているーーそんな状況を目にすると、家族はとても不安を感じるものです。
または失くしものが多くなったり、思い違いや同じ質問が多くなったりすると、いつかはこうなると分かっていてもやはりショックを感じてしまいます。
そうした兆候が見え始めると、訪問販売や電話詐欺の被害も心配になります。家族としてはますます目が離せなくなり、どのように対応すればよいか悩むことが増えてくるでしょう。
もし高齢の親が一定の資産を持ち、同居していない場合には、金銭管理の方法を見直す時期かもしれません。
どこに相談すればいいの?
このような状況になったとき、多くのかたは「どこに相談すればよいのか?」と迷われるかもしれません。
まず、介護が必要な状態であれば、要介護認定を受け、介護保険サービスを利用することができます。しかしまだ何の手続きもしていない場合でも、今から適切な支援を受けることができるよう働きかけていきましょう。
成年後見制度について相談できる窓口として、以下の機関があります。
- 市区町村の中核機関や地域包括支援センター、社会福祉協議会
- 司法書士会や公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート
- 弁護士会の相談窓口
- 法テラス(日本司法支援センター)
- 権利擁護センターぱあとなあ(社会福祉士会)
- 全国社会福祉協議会の権利擁護支援窓口
なかでも地域包括支援センターは身近な相談窓口として利用しやすいでしょう。
成年後見制度に関わる専門職が常駐しており、本人の状況や家族の希望に応じて、適切な支援へとつないでくれます。
金銭管理を家族で行いたい場合の注意点
高齢になると、通帳の管理や現金の扱いが雑になりがちです。特に判断能力が低下すると、家族間で金銭を巡るトラブルが発生しやすくなります。
とくに資産のある方については家族内での争いが起きやすく、互いに嫌な思いをすることが少なくありません。そのため、成年後見制度の利用を考える方が増えています。
ご家族で成年後見人を希望される方がおられますが、これはあまりお勧めできません。
成年後見人には膨大な管理業務が伴います。
日々の財産管理に加え、記録の作成、定期的な裁判所への報告義務などがあり、専門知識がなければ負担が大きすぎるのが実情です。特に資産家の場合はさらに複雑な手続きが必要になります。
また、親類や、近所の人から「お金を管理することで何か利益をえようとしているのでは?」と疑われるケースもあります。実際には家庭裁判所監督のもとで行われますので、不正はできませんが、そうした誤解を避けるためにも、専門家に相談した方が安心でしょう。
なお、資産が大きい場合は、親族が後見人をすることが認められないこともあります。
後見人の費用や制度の利用について
成年後見人への報酬は、家庭裁判所が決定し、公平な範囲で資産の中から支払われるため、必要以上の費用負担を心配する必要はありません。
生活保護受給者の方も金銭支援を利用するなどにより、成年後見を利用することが可能です。
地域包括支援センターに相談すれば、申立人の要件や必要な手続きなど詳しい説明をしてもらえますので、安心して手続きをすすめることができます。
さらに、要介護認定を受けていない方には介護保険サービスの申請方法についてサポートを受けることが可能です。
成年後見制度の種類と選任について
成年後見制度には、本人の判断能力の低下の度合いに応じて、以下の3つのタイプがあります。
1.後見(判断能力が著しく低下)
2.保佐(判断能力が中程度に低下)
3.補助(判断能力がやや低下)
判断能力が低下するほど、本人が単独で行える法的行為は制限され、後見人の権限が大きくなります。
後見人には、以下のような専門職が選任されることが一般的です。
●弁護士…相続やトラブル対応が必要なケースに強い
●司法書士…書類作成や登記業務に精通している
●社会福祉士…認知症など福祉面でのサポートが得意
社会福祉士は福祉の現場での経験を活かし、認知症の方への適切な対応やアドバイスを提供できるのが強みです。ただし法律の専門ではないため、提出書類など行える作業に限りがあり、別途司法書士や弁護士のサポートが必要になります。
具体的に誰を後見人とするかに関しては、家庭裁判所が決定します。本人・家族から候補者を指定する必要はありません。
早めの相談が安心につながる
成年後見制度は、本人の財産や権利を守るための制度です。
「そろそろ判断能力が落ちてきて心配だな」と感じたら、早めに関係機関に相談してみることをおすすめします。
親御さんはもちろん、家族も安心して暮らせるよう、成年後見制度の活用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

